等が移行・混合して発生し、島影など局地的に、しかも突発的に発生するため、海難事故の原因の一つと考えられています。「晴れ霧」発生については多くの調査がなされていますが、詳細な点については今後の解明を待つところもあります。
(2)「肱川あらし」による霧
愛媛県長浜では秋ごろに「肱川あらし」が吹き荒れます(図2)。この「肱川あらし」は、穏やかな晴れた日に、伊予灘と大洲盆地の夜間の温度差の影響で吹く陸風の一種で、陸から河口へ向かって吹く強風です。
「肱川あらし」は、陸地で発生した放射霧を伴って河口へ流れ出し、この放射霧は河口から海に出ると、消散はするものの冷気が扇状に流れて陸地から四〜五キロメートルの海上に達し、海面に蒸気霧を発生させます。この強風と海霧のため、この付近を通る船は注意が必要とされています。
(3)「がす」、「ずり」と「けあらし」
北海道東部において、五〜八月に主に沿岸域で発生する海霧のことを「がす」と呼びます。特に七・八月はもっとも多く、海霧が連日発生し、一週間から最長十日も続くことがあります。これによる濃霧の継続時間は一〜三時間がほとんどですが、なかには六時間以上になることもあります。「がす」の最盛期には、霧に加えて霧雨が混じる「ずり」の状態になり、「ずり」の状態になると霧は終日晴れないといわれています。
「けあらし」は「がす」と異なり、冬の期間に生じる海霧のことで蒸気霧です。
この「けあらし」は最低気温氷点下一〇度ぐらいから現れ、氷点下一五度以下になると頻繁に発生します。また海面水温と気温の温度差が大きいほどよく現れ、その差が一五度以上になると頻繁に発生します。釧路の人は「けあらし」が発生すると「今朝は『けあらし』がでたから、シバレた」とか「今日は『けあらし』が出たから昼間は天気が良くなる」などと寒さや観天望気の目安にしています。

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五、終わりに

霧は、地域によってはほとんど見ることもない現象ですが、一部の地域においては日常生活に多くの影響をもたらしています。また海霧による船舶の災害も多くみられ、海霧の発生機構の解明とその予報は社会的にも重要となっています。
最近、海霧の予測については、大規模に発生するものについてはかなり予測できるようになってきましたが、瀬戸内海の島影など局地的に発生するものについては、各々にその具体的な場所を特定するほどの予測技術は確立されていません。現在では陸地や沿岸では霧観測装置など自動測器を設置した観測も行われ、洋上では気象衛星「ひまわり」の雲画像によって海霧の発生状況がかなり分かるようにはなってきました。
しかし、夜間に発生している海霧や雲の下で発生している海霧については、衛星からでは十分に識別できません。そのため外洋においては、船舶からの通報による情報が貴重なものとなっています。また船舶による気象通報は海霧だけでなく、日々の天気予報や「北太平洋海洋気候図三〇年報」の作成など、多方面において気象業務に貢献しています。船舶の海上気象凄測通報に感謝します。

 

 

 

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